日々高齢者と接する機会のある看護師さんに知って欲しい「スキンテア」は褥瘡とは全く違う高齢者に多い皮膚トラブルです。褥瘡とは違うの?原因って何?防ぐにはどうしたらいいの?という悩みを解決!スキンテアへの知識を高めましょう
日々高齢者と接する機会のある看護師にぜひ知っておいてほしい知識
スキンテア
こんな傷になっているのをみたことはありませんか?
傷付けるつもりはなかったのに、手が車椅子に当たって、こんな傷を作ってしまいました
悲しいですね。
こんなふうにできてしまった傷
この傷、なんていうか知っていますか?
故意ではなく、いつも通りの方法でいつも通りの介助を行なっても傷ができてしまうことがあります。
スキンテア??
スキンケアではなくて?
スキンテアだよ。
スキンテアの予防にはスキンケアも大切だけど今日知って欲しいのはスキンテアだよ
スキンテアは褥瘡とは違う、
高齢者に多い皮膚トラブル
この記事では実際に看護師として10年+α体験した事例や起こりやすい原因を理解し防ぐことを目標にまとめてみました。
- スキンテアを原因がわからない
- 褥瘡との違いがわからない
- スキンテアの予防がわからない
そんな看護師さんの悩みを解決できます
起きようとして手を引っ張ったら皮がめくれたり柵に手足がぶつかったり。
スキンテアは日常の場面でおこります
この記事を書いている豆大福餅も、同じように傷つけてしまったことがあります。
そして、同じように傷つけてしまわないように「スキンテア」を勉強しました
柵に足をぶつけた人の皮膚がめくれて、血が出たの。
自分のせいで…と思うと悲しかった
患者さんもとても痛くて悲しいですし、痛いので動けなくて行動が制限される事も悲しいですね。
その傷を作った原因が自分だと思うと見るたびに申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
悲しいことは繰り返さないで防いでいきましょう!!
スキンテアの原因を知って行動を変えよう
この記事を読むとこんなことがわかります。
- 高齢者の皮膚の特徴がわかる
- スキンテアの予防、原因がわかる
- 患者さんの悲しい顔や新しい傷を防げる
- 「故意」や「虐待」と誤解されないよう家族にスキンテアについて説明できる
- 観察し、異常の早期発見
- 原因から早めの対処、予防できる
高齢者に関わる全ての人が頭の片隅に知っておくと役立つ大切な知識がスキンテアです٩( ‘ω’ )و
まずはおさらい!!
高齢者の皮膚の特徴
加齢による変化で高齢者の皮膚は脆く、乾燥します
高齢者の皮膚は、脆弱で傷つきやすいです。
年齢とともに水分が失われやすい特徴のある高齢者の皮膚は、皮膚のバリア機能である『角質層』が薄くなっています。
ハリのあるすべすべ素肌から、ざらざらした素肌になっていきます。
特に腕や足の部分は乾燥しやすいです。
さらに、心不全、栄養状態の悪化により『浮腫みやすい』という特徴もあります。
栄養状態が悪ければなかなか傷は治りません。
この高齢者の肌は脆弱で、傷つきやすいという特徴を知ることがスキンテアの予防の第一歩です。
スキンテアと褥瘡の違い
スキンテアの語源は
SKIN=皮膚、Tear=裂ける
と言われています
スキンテアはどんな傷?
ポイントは一時的な外力、そして真皮深層までの損傷
つまり、褥瘡よりも短時間で生じるが、骨や筋肉層までの深い傷にはならない
ということです
褥瘡は骨突出部に持続的な外力が加わり、生じてしまうでしたね
褥瘡とは発生のメカニズムも異なります。
スキンテアはSTAR分類で評価
STAR分類という分類があり、カテゴリー1a〜カテゴリー3まで分類されています。かテゴリー3が一番傷が深い状態です。
カテゴリー2とカテゴリー3の大きな違いは皮弁があるかどうかです。皮弁がある方が治りが早いです
これらのスキンテアは日常生活の場面で起こり、日常生活のケアで見つかることが多いので
発生した時の対処方法よりも、まずスキンテアを起こさないことが大切になってきます。
高齢者の皮膚の特徴は、皮膚科学に特化した製薬会社 マルホ に詳しく載ってました。ぜひ参考にしてください
スキンテアの原因
原因を知らないと予防ができません。
まずはリスクをアセスメント!!
原因はたくさんあるけれど、要因を大きく分けると二つ
スキンテアが起こりやすい状況
スキンテアが起こりやすい身体状況
この二つが重なった時、リスクが高まります
原因をアセスメントする癖をつけると
「この皮膚、やばそう」
と直感で思います
覚えられるかな…
大丈夫です。
この記事で原因を一つ一つ。理由も一緒にお伝えしていきます
リスク高そうな皮膚はスタッフで共有しみんなで防いでいきたいですね
スキンテアが起こりやすい状況
スキンテアが起こりやすい状況があります
- 入浴、清拭などの清潔ケア
- 転倒・転落
- 車椅子移動の介助
- ベッド柵にぶつけた
- テープを剥がした後
これらの共通点は
皮膚が接触する機会が多い時
特に介助時や入浴、清潔ケア時など無防備な状況で皮膚がぶつかって剥がれたり裂けてしまったりします。
また、絆創膏を剥がすときに一緒に皮膚が剥離してしまうケースもあります。
麻痺があり、行動に制限があるときのケアは注意をする必要があります。
スキンテアが起こりやすい状況は、皮膚にものが接触する時や介助をする時
スキンテアの起こりやすい身体状況
どんな身体の状況が起こりやすいでしょうか?
起こりやすい状況を原因からアセスメントすることができます
アセスメントのポイントは4つ
治療歴や内服薬も関係するの?
実際に関わったことのある患者さんをイメージしてみるとわかりやすいよ
- 移動手段
- 移動への介助の有無
- 身体状況と、患者さんの認識の差がないか
- 転倒歴、転落歴はあるか。骨折の既往はあるか
- 介護度(要支援、要介護)
- 栄養状態
- 現在の治療
- モニターや酸素、ルートなどの医療機器
- 既往歴
- 腫瘍により抗がん剤や放射線治療を行なっているか(抗がん剤の副作用、放射線治療の副作用の影響)
- 心不全、脳梗塞、脳出血などの既往(薬剤に関連してきます)
- 透析患者、腎疾患(アルブミンの低値、浮腫を起こしやすい)
- 利尿薬やステロイド(長期の使用で皮膚が薄くなっています)
- 抗凝固薬や抗血栓症薬など(皮下出血が起こりやすくリスクが高いです)
- 過去にスキンテアがないか
- 皮下出血
- 乾燥の有無
- 水疱、日焼け
この4STEPで総合的にリスクをアセスメント
疾患、治療、ADLどれも患者さんの全体像を把握することが大切ですね
スキンテアの予防
リスクをアセスメントしたら、次は予防です
看護師の介助によって特に起こりやすいのは「立ち上がる時、移乗の時」と言われています
清潔ケア時、排泄ケア時に全身を観察し、移乗時は特に気をつける
これだけでも、スキンテアの発生を予防できます
立ち上がろうとした際、バランスを崩し咄嗟に上から腕を掴み、その外力でスキンテアができてしまった。
これは実際に起こった症例で豆大福餅が体験したことです。
今この記事を読んでいることも予防につながるね
スキンケア
保湿剤を使用
一番の予防は保湿剤を使用することです。傷つきやすい皮膚を傷つきにくい皮膚にします。(保湿剤の使用で50%発生が減ったとの研究があります)
おすすめの薬剤は、白色ワセリン、ヘパリンクリーム、ヒルロイドローションなどの医薬品だけでなく市販のニベアやザーネクリーム、キュレルローションなども在宅では使いやすいと思います。
処方してもらったり、家族さんに購入を依頼しましょう
保湿剤塗布のポイント
洋服で直接当たらないようにする
洋服などで保護
直接皮膚に物が当たらないだけでなく、保湿・保温の面からでも有効
- 長袖、長ズボンを選択
- 上肢:肘までの手袋、アームカバー
- 下肢:膝丈靴下、レッグカバー
家族さんに靴下を持ってきてもらうときに、「ゴムのキツくない靴下」を依頼するだけでも浮腫は軽減できます。
環境調整
ベッド柵や車椅子,テーブルなどに転倒した時や認知症などで周囲への注意が低下していると知らずにぶつけてしまう事も考えられます。
周囲の環境整備は看護の基本
これらの対策もすぐできるので、ぜひ取り組んでみてくださいね( ^ω^ )
▶︎柵カバー:ぶつけないよう柵を保護する
▶︎車椅子移乗時:靴下と靴を着用、足を守るためレッグカバーなどを活用
*フットレストにあたって足を損傷することが多いので、移動時外せるフットレストは外しておく
予防のための看護ケア
直接患者さんに接する機会が多い看護師
家族さんにリスクを伝えるのも大事な仕事
傷つけようとしてケアをする人はいません。
でも、高齢者の皮膚は気をつけていてもリスクが高くスキンテアを起こしやすいのが実情です。
しかし大切な家族が見たら「看護師、介護士が怪我させた」と誤解をされることもあり、不信感につながることもあります。
入院時にスキンテアの可能性をお伝えし、保湿や衣服などできる対策を協力してもらうことで理解につながります
入院中だけでなく、退院して自宅に帰ってもスキンケアは気をつけて欲しいですね
ケアのポイント
支えるときは優しく、引っ張らない
腕を支えるときは下から支える
リスクのある人として関わる
相手を大切に思い、ケアする時の対応は丁寧に行われます。
業務が忙しく、看護師のペースで焦って仕事をすると、思っているより動作が雑になっています。その気持ちは相手にも必ず伝わっています。
自分の心に余裕がないと感じる時もあると思います。この記事もぜひ読んでみてください
医療用テープもスキンテアの原因
スキンテアの原因になる可能性があるのが、医療用テープを剥がすとき
採血後のテープ、処置の時のテープなど病院では医療用テープは常に身近にあります。
テープ以外の固定方法がないかを検討し,必要時には被膜剤を使用してから貼付し,剝離は剝離剤を使用しながらゆっくりとテープを反転させる。
不必要なテープを貼りっぱなしにしないように心がけましょう。
皮膚の弱い方には、「皮膚に優しいテープ」も発売されています。
医療用テープは思っているよりも粘着力が高く薄い皮膚ではテープにくっついて、一緒に剥がれてしまいます。
起こった時の対処法
怒った後は早期に対応、再発予防
起こらないように予防しても、起こってしまった時は早く治るように処置を行いましょう
そして、起こった原因を考え再発予防に努めましょう!!
病院によって対応は異なるかもしれないので、自施設の対応を前提にしてくださいね。
発見時
発見したらどうするの?
現状を把握、出血していたら止血!!
- 止血し、生食(または微温湯)で洗浄:基本的には石鹸は不要
- STAR分類に基づき評価
- 処置をする被覆剤や軟膏を選択する:大きさや浸出液の量で選択
- 皮弁の有無を判断:必要時SSテープ(ステリストリプトテープ)使用する
皮弁がある時は、皮弁をできるだけ元の位置に戻します。皮弁がない時は被覆剤を使用し湿潤環境を保ち外部からの感染を防ぎます
被覆材使用時
使用被覆剤:アクアセル,ハイドロサイトなど
*病院によって使用している医療材料は違うと思うので医師の指示のもと使用してください
自分で判断できない時は、先輩に相談!!
●受傷直後で明らかに感染や出血がないときは、上皮化を早めるために閉鎖環境を提供できる、シリコン製の創傷被覆材で閉鎖する。
●透明でない被覆材では、誤った方向に剥がさないよう、被覆材に矢印で剥がす方向を記すとよい。日付も書く(浸出液がなければ1週間〜10日そのまま)
皮弁と反対方向に剥がさないようにするために剥がす方向に矢印を書く
STAR分類カテゴリー:2b〜3の時に使用されることが多い
軟膏での処置時のポイント
ポイント
軟膏で処置するときもありますよね。
その時の処置のポイントをまとめてみました
ガーゼをそのまま軟膏をつけずに貼ることだけは絶対にしない
ということです。そのま傷口にガーゼをつけると出血が乾燥し、ガーゼにくっついてしまうからです。
軟膏は多いかなと思うくらいたっぷりつけましょう。
実際に体験した悲しい事例
最後に実際によくあるけれど、起こると悲しい事例を見ていきましょう。
- Aさん 80代男性
車椅子には介助で移乗し、脳梗塞の既往がある。認知症があり周囲への注意力が低い
ある夜、巡視をしていると布団に血がついている。よく見ると柵手をぶつけ出血し、スキンテアを起こした様子。
夜間であったため生食で洗浄し、皮弁があったのでSSテープを貼付。そのままガーゼを覆い保護をした。
翌日、創部の確認をしようとガーゼを濡らしながら剥がすが出血によりくっついていた。
ガーゼを剥がしたときには皮弁がなくなっていた。
どうしたら防げたでしょうか?
まず、皮下出血がありスキンテアのリスクが高いことがわかると思います。
そして、発見時には皮弁がありますね。
この皮弁を損なわないよう治したいですし、柵にカバーつけていたら防げたかもしれません。
<注意>これらの内容は参考に覚えておいてほしいですが、最終的な治療は一人一人症状や傷の程度が違うので、医師や看護師の指示のもと判断してください
在宅での対処はこちらも参考にしてください
まとめ
誰もがおこる可能性のある「スキンテア」だからこそ、起こさないような予防が大切です。
スキンテアを予防するために今日から早速行動!
- 高齢者の皮膚の特徴は脆弱で疾患や薬、加齢による変化でスキンテアが起こりやすい
- スキンテアの予防には保湿、環境調整、ケアが大切
- スキンテアが起こったときには早く治せるよう適切な処置を行う
- 家族にも協力してもらい、家族指導をすることでスキンテアの理解と予防の継続につながる
- スキンテアのリスクが高いことをスタッフで共有。必要時コメディカルスタッフにも情報を共有する
もっと詳しく知りたいと思った方はこの本も参考になると思います。
雑誌などでも特集されていることがありますし、また本屋でも探してみてくださいね。
これからも患者さん、看護師を守るための情報をお伝えしていきます。
今日も心と体を健康に過ごせますように♬
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